AYU

冬迫る、鮎枯れる

あっつあつななつは、秋を呑み込んで時間を冬へとおしやった。
友釣りを初めて13年目の夏はかつてないほどの河川コンディションの悪化となり、結果的にシーズン終了まで釣りにならず…

過去最低に釣れなかった年となった。

鵜たちは元気に魚を追い、しっかりと自分たちの居場所を守り切った。
糞で竹をこれだけ真っ白にするほど、かつてない鵜の量。

それだけ川に魚がいて、そしてさらには魚を捕りやすい環境だったのだろう。

こちらのねぐらもしっかりと復活。

展示会の都合上、もっともみたかった鮎の産卵はどうやら逃してしまったらしい。

川はすっかりと静かになっていて、トビやサギ、鵜の姿も産卵場には少ない。

コロガシの人たちも掛けてはいるようだが賑わいはうすい。

秋をほとんど介さずに、夏から冬へと季節は進んでしまったようだ…。
それだけ、鮎の産卵期間のばらつきはなくなって、一極集中へと…それが昨今の鮎事情なのだろうか。

水は澄んで冷たい。

緒川で産卵状況を調査する方にお話を伺うと、今年は例年よりも一カ月以上産卵が遅れているとのことだった。
昨年と同じような傾向なのだろうか。

【妄想生態】それは陸封以前からもちえたもの

それにしては賑わいがなさすぎるし、すっかりと産卵は終わっている様子。
どうもしっくりこない。

そういえば、例年8月中旬から下旬に見られる「鮎の下り」、つまりあゆる鮎の姿は今年は8月の頭に見られた。
やく3週間以上早く、大型個体の群れがわさわさと下って行った。

おそらく河川水温の上昇が影響していて、それを避けるように大型が下ったのかもしれない。
例年より夏のピークは早くやってきて、夏の暑さは秋を呑み込んだ。

早期に降った大型もおそらく産卵が遅れたはずで…早めに降って、彼らの居場所はあったのだろうか。

川原にはコロガシの仕掛けが今年もころがっていた。

黒く枯れた鮎たち。

たまりに流れ着き、かおる。

すでに産卵の時はさったようだ。

どのような時を那珂川で過ごしていたのか。

枯れた鮎それぞれに、それぞれ違ったストーリーがあるはず。

そうしてまじまじと眺めると、その違いを感じることができるような気がした。

ここ数年の目まぐるしい河川環境の変化に対応する姿。

より小型に、群れ鮎に。
数を増やして経験のバリエーションを増やす。
まさに流域スキャニング。

那珂川の鮎という種、流域スキャニング

点在する好適環境を独占できるほど、強い縄張りを有する強さと大きさは不必要になった…。

もしかしたら、友釣りが通用しない川になるのかもしれない。

枯れてもまだ目は青い。

鳥や小動物に食べられることなく、川へと帰っていく姿。

また次へと繋がっていく姿。

産卵する生きた姿だけでなく、枯れた姿にも未来を感じることができる。

川鵜4.5%、人間94%
那珂川の鮎の利用率は鵜より人間のほうが格段に高いというデータが示された。
しかも産卵期の漁獲はこのデータに含まれていないから、もっと人間の方がとっていることになる。

川鵜がいなくならない理由ははっきりしたし、腑に落ちた。

僕らがすべきことは明確化したわけだけど、果たしてこれを受け入れられるかどうか。
そこが大きな問題だろう。

本質をとらえて逃がさないデータ。
もう逃げられないし、目を背けてはいられない。

来年もまたこれまでと変わりなく、鮎はまた川を遡上してくることだろう。
僕らの行いのすべてを鮎は呑み込んで、また帰ってきてくれる。

その逞しい姿に安堵してはいられないし、あまえてはいられない。

那珂川の川藻釉薬開発前のページ

びしっとぞっと次のページ

ピックアップ記事

  1. 【魚類妄想生態学】那珂川に生息するサクラマスの生活史

  2. 【速報】那珂川天然遡上アユ初確認!!

  3. 【魚類妄想生態学】那珂川に生息する戻りヤマメについて

関連記事

  1. FISHES

    【那珂川水系産BambooRure】~トップウォーター竹リップクランクからの…~

    かれこれ20年以上…いや、25年近く前の話になります。過去に…

  2. AYU

    【速報2021年初】那珂川天然アユ遡上確認!!

    那珂川天然遡上アユ調査2021。もう茨城県に引っ越してきて遡上アユシ…

  3. AYU

    2040年の遡上予想

    今期の那珂川の鮎の遡上については昨日の記事のとおり。http…

  4. FISHES

    君が風に舞う髭かき分けた時の…

    思い出す…意味なく…変わらない香り……

  5. AYU

    日差し浴び、帯緩みて砂を食む

    あっという間の4月下旬。1年の3分の1が終了…。日中…

  6. AYU

    雨と鵜と…いま

    5月下旬のこと。僕の観察の眼差しは鮎から鵜へ。那珂川の鵜。…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. LIFE

    那珂川水系産の南天箸づくり
  2. HANDMADE WORKS

    【猿腰泥蜂郎】那珂川水系産ランディングネット
  3. AYU

    カワウ入り浸りが引き起こす~カワ負スパイラル~
  4. LIFE

    盆栽鉢はジャイアントコーン的な焼き締まり感
  5. AYU

    本当にあった怖~い話―那珂川鮎の友釣り―
PAGE TOP