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【魚類妄想生態学】那珂川に生息する戻りヤマメについて

4月も中旬にさしかかり、桜の花ももうすぐ見納め。
相変わらず那珂川には水が少なく...サクラマスや戻りヤマメ、アユはちゃんと上流へ遡上できているのか。心配だ。

茂木の大瀬。河原をみれば如何に減水しているかがわかる。ウェーダーであっさり川をきれるほどだ。

三川又の堰。

右岸側の魚道はなんとか機能していたものの、そもそも右岸を遡上経路に選択しないほどの流れの少なさ。どうだろうこの堰。わりといい感じにアユが遡上できそうではないだろうか。
左岸のほうが水は多く流れていた。しかし、魚道がちゃんと機能していたかは確認できなかった。

さらに上流には矢組堰があるが、ここも遡上は困難だろう。

とにかく渇水がひどい。

風の強い日が続き...

釣りには行けず...ただただ雨ゴイ。
ちびっこたちと戯れながらなんとか那珂川を眺めには行って、魚の気配と雰囲気だけ感じ取る訓練をした。

そうしていると、ようやく一雨あった。場所によっては雪。この雨で小口で25㎝、川堀でも19㎝増水した。すこしは魚たちも移動できそうだ。
きっと誰かはサクラマスを手にするのだろうな。
もやもや感を抱きつつ、さらなる降水を祈る。


戻りヤマメの妄想生態学的知見

釣りはできなくても、色々と考えたり、イメージを膨らませたりはできるもの。
那珂川の戻りヤマメについて考えてみた。

そのまえに、少し整理しよう。

まず、那珂川のヤマメには“川に残る個体”と“海へ降ろうとする個体”(栃木ではシラメと呼ばれる)の2タイプがいる。

シラメ

川に残る個体だが、これは河川残留型のヤマメである。
一方、海へ降ろうとする個体、つまりシラメは、さらに2タイプに別れる。それは、「海に降る個体」と「海に降るのを止める個体」。前者は海洋生活を経てサクラマスになり、後者は海や河口(汽水などの塩分域を含む)へは行かず退行型シラメ...通称、戻りヤマメとなり、河川を遡上する。

さらに別けるとサクラマスには2タイプがある。
海洋生活期間が1年ほどの一般的なサクラマス(春に降海、春に遡河)、海洋生活期間が短いサクラマス(晩秋から冬に降海、春から初夏に遡河)である。もっと細かく別ければきりがないが、秋に海から遡上してくるサクラマスや生まれてすぐに海に降るサクラマスもいる。もちろん、これらに当てはまらない個体もいるだろう。

那珂川には50~60種ほどの魚が生息しているようだが、サクラマス・ヤマメで妄想しただけでも生活史にかなりのバリエーションがある。奥が深い。

これから戻りヤマメやサクラマスについて書いていきたい。

まずは戻りヤマメ

戻りヤマメとヤマメ、いずれも一生を淡水域で過ごすのだが、生態的な部分で大きな違いがある。前述のとおりだが、はじめっから川で暮らすことを選んだのがヤマメ、海に降るつもりだったが止めたのが戻りヤマメである。

戻りヤマメは大きな河川内移動を経験しているため、外部形態もヤマメと異なる。ヤマメは動かないからパーマークは大人になってもはっきりしており、これは川の石などへの擬態とも考えられている。
一方、戻りヤマメは元々シラメなのでギンケが抜けきらない。パーマークがはっきりしない。見る角度によってはサクラマスである。戻りヤマメは河川内の移動性が強い。ゆえに石化けのためのパーマークは必要でない。海のイワシと同じで鏡のような銀色の体色を保って存在感を消している。サクラマスとの区別には様々な角度から魚体を観察し、斑紋がないかじっくり観察する必要がある。

尾ビレの形もサクラマスとは違う。くの字型で縁は丸みを帯びる。サクラマスのように鋭くない。

口の中は黒いので、遡上して時間が経ち口の黒さが抜けてきたサクラマスとの区別は困難だ。

戻りヤマメはシラメとして晩秋から春にかけて川を下ったあと、河川の水温の上昇とともに上流へと遡上していく。この時期は形態的な特徴が似ているサクラマスの遡上時期に一致する。そのため、サクラマスと戻りヤマメの判別を難しくさせる。特に、大きさが30~40㎝の海洋生活期間の短いサクラマス(短期降海型サクラマス)が那珂川に生息しているのだからより判別が難しい。

ちなみに、福井県の九頭竜川ではこの短期降海型サクラマスのことを“モドリ”というようだ。

また、戻りヤマメは成長がとても速い。那珂川の生産性の高さも効いている。アユの遡上やサケ稚魚の降河も重なるから餌には不自由しない。海にいる感覚で摂餌活動を行っている。サクラマスと違って、いれば高確率でルアーに掛かるという感覚は、まさにこのためだろう。よく食べるから若くして大きい。1~2歳で30~40㎝にもなる。一方ヤマメは移動せず、体力は使わず、大食いはせず、細々と質素にくらして、少しずつ成長するから長生き。4歳もいる。
もともとシラメがそうである。海に降ることを決意した個体は、ガンガン餌を食ってでっかくなるんだ、という体になっている。意思もそうさせる。ただ、諸事情で海には行けなかった、というより行かなかった戻りヤマメ。川でも十分に上流にいるヤマメよりでっかくなれることをわかっている。そして、海から遡上してくるサクラマスに何食わぬ顔をして混じり、あたかもサクラマスであるかのようにふるまう心の強さ。いつだってやり直せる。
サクラマスとともに産卵場へ向かって、いつしかのヤマメよりも沢山の卵を産むことで子孫を存続させる確率を高める。川にいながらサクラマス。ヤマメが増えれば、サクラマスや戻りヤマメは増える。
戻りヤマメはサクラマスと同様に那珂川のヤマメ・サクラマス資源を存続させるために重要な役割を担っているのだと思う。まさに那珂川をヤマメ溢れる川へと戻してくれる、そんな魚なのかもしれない。

順応性。適応性。那珂川の戻りヤマメはとにかくすごい。
なんとかこの渇水を乗り越えて生き延びてほしい。
そして釣り人を楽しませてほしい。

次回は【サクラマス】について書きたい。


ヤマメからのコクチバス前のページ

那珂川のアユと御前山ダムのカワウ次のページ

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コメント

  1. Riverlineさん、初めまして、こんにちは。
    海山を釣り歩く、咲いたマンと申します。
    私もヤマメ釣りを嗜みますので、戻りヤマメの記事大変興味深く拝読いたしました。
    那珂川流域でもしばしば遊ばせていただいてますので(北部漁協の組合員ということになってます)、
    これからほかの記事を拝見するのが楽しみです(笑。
    この春もコゴミやシドケを摘みがてら、お邪魔させていただきます。

      • River4129
      • 2021年 3月 24日

      咲いたマンさん

      はじめましてRiverlineです。
      記事みていただきありがとうございます。
      また、コメントくださりうれしいです。
      マスはめっきり釣行回数が減り、鮎ばかりですが、
      ここのところマスへの想いをハンドメイドにて表現しております。

      だいたいテキトーなことをぼやく記事ばかりですが、
      どうぞよろしくお願いいたします。

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