今期の那珂川の鮎の遡上については昨日の記事のとおり。
この遡上観測を始めて7年がたったのだけれども、観測日と実遡上日とには当然ながら差があるということ。
過去の遡上記録の記事を遡ってみてもそうだが、やはり2月中下旬には必ず早期の遡上があるということ。
これは水鳥たちの動向や潮回り、気温、水温などの状況から推察することができるものや、動画像から明確に鮎と断定できない魚影、カメラに抑えきれていない実測を含む。
それと、「昔は遡上がもっと早かった」という言い伝えもある。
季節の遅れに伴う夏の暑さの長期化、産卵期の遅れによる遡上期の遅れはそう明確に起こってはおらず、むしろそれに順応する形で例年決まった同じ時期に早期遡上はやってくる…というのが僕の考え。
そう勝手に解釈して、じゃあ何故なのか?と問う。
例えば今年、産卵期が遅れ、さらに海水温が低かったにもかかわらず、やはり2月下旬に遡上はあるわけで…
海での生活期間が短くなっているはずなのに、決まった時期にちゃんと遡上してくる。
いったいどういうカラクリなのか。じゃあ遡上個体のサイズは小さいんだろうか?
遡上を始める体サイズの下限があって、それをクリアしていれば遡上環境条件を満たした時期にいつでも体サイズに関係なく遡上するのだろうか。
遡上する姿を映像でみていると、だいたい同じくらいの大きさにまとまっているように見えるが、中にはとびきり小さな個体もちらほらいる。孵化日組成が気になってきた。

妄想は膨らむばかり。
そんな妄想とは異なり、年々、那珂川の鮎の遡上時期が早まっているように感じるデータがある。
下図は茨城県と栃木県による遡上調査の結果を個人的にまとめたもの。
任意に外れ値を線引きして、はじいて図示。

この遡上確認日にそれっぽそうな近似曲線を引っ張ってみたら…
16年後の2041年には遡上鮎は2月末に栃木入りする予想に。
なんとも懐疑的だけど、傾向としては早まっているように見えてしまう。
ここでは説明しきれない色々な要因があり、それを取り除いたとしてもなだらかに右肩下がりなのは否めない。
これは極端としても「温暖化」とあっけなく表現してしまえば片付くものでもなさそう。
遡上は「決まった時期に毎年ある」「遅れている」「早まっている」
抽出する材料の選択次第ではおそらく様々な見方ができそうなのは確かで、どう認識、解釈するべきか。
この50年の環境激変の時に、目の前の鮎たちにいったい何が起きているのか。
まったくもってつかめないもどかしさがある。
つまりそれは「野生」なのであって、僕たちがコントロールできるようなものではないのだろう。
だからこそ僕らがすべきことがある。
そしてもう一つ。
遡上にかかる時間。
遡上スピードの話。
過去にまとめた記事は下記のとおり。
遡上期には①河川順応期、つまり海から川に入ってきたばかりの遡上初期の群(以下、河川順応群)と、②河川順応後、一心不乱に遡上(ランナーズハイ期)する帯状群とがある。
「…がある。」というか勝手にそう名付けた。
勝手に名付けた訳だけど、一応観測データや公的公表データを交えて解析したもの。
過去の遡上スピードの解釈として今回新しくなったのが、①の河川順応群の遡上スピード。
久慈川のデータを参考に推定したのではなく、那珂西地区での観測日と千代橋での観測日のデータ、つまり那珂川だけのデータを使って計算したということ。
図のとおり。

各年ごとに帯状群(千代橋→栃木県境の群れ)と河川順応群(那珂西→千代橋)の遡上スピードをプロットした。
それによれば、河川順応期は1日600mしか遡上しないし、帯状群となれば2.4kmも進む。
これは過去の推定より少ないが、近年の観測状況が大いに反映されていて、そこまで独りよがりではないと思う。
ただちょっと河川順応群の0.6 km/日はゆっくりりすぎかもしれなくて、2020年の僕の実測値の1.5 km/日くらいが実際なんじゃないかとは思う。データの積み重ねが必要だ。
これにより今期の遡上到達日を推定すると以下のとおり。
3月8日千代橋
3月15日栃木県
河川順応群1.5 km/日で計算すればすでに昨日の3月2日には千代橋を通過していることになる。
そうすると栃木県へは3月9日となり天気次第では十分にあり得るが、実際は雪だからそう早くはないだろう。
もう、あ~じゃない、こうじゃないって、だからなんだ。って話なんだけど、ここ数年の傾向を見てなんとなく実像がみえはじめてきていて、まとめておきたくなった。
まだまだ鮎は調べたいことがたくさんあって、例えば一昨年秋の衝撃的な脳天ぶち抜かれ~な産卵小型魚の孵化日とか。
調べたいけど手がまわらない。
どうしたらいいものか。
いろいろひっくるめ、「生」で得たエネルギーを木工にぶつけたい。
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