山の頂上付近から青緑色の大河を望むと、そこにはたくさんの鮎師の姿がありました。
ぼくには到底手を出せないであろう深々とした大河に立ちこむ鮎師の姿に少々ひるんでいますと、そんな大河を一台のオフロード車が川の中へと入っていきました。
一部だけ砂利がもられ浅くなったルートを選択し、川の中に車を停車。
よく見るとジムニーやらランクルやら多数の車が乗り入れています。
「鮎追いの欲望、いと深し」
僕は山をおりてふもとのロの字型の商店街を散策。
何を買うでもなく一回りして、帰ることに。
やらねばならぬパソコン仕事をするために、作業場を探す。
コンクリート擁壁のふもとにあった赤い屋根の6畳ほどの広さの平屋にて仕事をすることにしました。
でもここは誰かの住まいで今は留守。
勝手にあがりこんでパソコンを広げて仕事を始めました。
間もなくして誰かがサンダルの音と共にやってくるのが分かりました。
親戚の兄ちゃんです。おにぎりをにぎる姿がかっこいい兄ちゃんです。
何やってんの?歌ってなかった?
そういわれて僕は歌声をきかれて恥ずかしく思ったのもあって、「ごめん」といい、かけていた三浦大知の燦爛を止めました。
ほどなくして数台の車が庭にやってきて車に毛布がかけられました。そして一人が部屋に入ってきました。
住人の方です。
クレしんのみさえのような髪型で赤い半纏をきたばあちゃんでした。
見たことのないばあちゃんです。
「使わせてもらってます。」
そう僕がいうと何も言わずに手荷物をもったまま奥の方へとはいっていきました。
奥には屋外の石畳の廊下を挟んでたいそう大きな家屋がありました。
親戚の兄ちゃんが来た方です。
ばあちゃんが向かった方から今度は若い女の人が来ました。
えくぼが素敵な親戚の姉ちゃんでした。
寝起きだったようで灰色のパジャマ姿、下はパンツ一丁。いつもの優しい笑顔です。
おしっこがしたくなり、大きな家屋へと向かいました。
大きな家屋は木造の古い屋敷でロの字型。
一番奥に厠はありました。僕の母校の小学校並みの広さの厠で廊下からはすりガラスで中がうっすらと見えています。
赤、オレンジ、黄色、、、もうとにかく鮮やかな生地がはりめくらされた厠。
いままでに経験したことのないような厠です。
小便をしようとしたところムズムズしてうんちの和式のほうへ歩みをすすめます。
するとガラス越しに親戚の姉ちゃんがくるのが分かりました。入ってきました。
「ここのデザインはね、占い師の人にいわれてやったの」
楽しそうに話してくれました。話をきいているうちにうんちも引っ込んだのか、済ませたのかは覚えていませんが、厠を後にし、ロの字型の屋敷を案内してもらうことになりました。
ロの字型の屋敷にはいくつもの部屋がありました。
初めに目に留まったのはすべての材料を竹材で仕立てた客間。赤紫色に染まった竹がなんとも印象的でした。
さらに進むと、まるで小学校の理科室のような部屋が。
棚の高い所に上半身だけの人形が3体ほどあり、淡黄、淡紫、淡青の型紙が巻かれています。
真ん中には手術台のようなテーブルがおかれており、くりくりおめめのウサギちゃんが描かれた紙人形がいくつも並んでいます。
よくみるとウサギちゃんの目や顔にはまち針がたくさん刺さっています。
どうやらここは服を作る場所のようです。
すると部屋越しの廊下を白衣をきたおじさんがスタスタと忙しそうに歩いています。
どうやらここは病院のようです。
病院、服をぬう…
なぜか、まったく違うもののようであり、なんだか同じにも感じてくる…
僕が記憶するには、案内してもらった屋敷には鎖で鍵がかけられた扉が2つありました。
一つは先ほどの厠や服をつくる部屋へと入る扉。最初のばあちゃんの家から入る扉です。
もう一つの扉がどうしても気になる。
そして赤い半纏のばあちゃん、白衣をきたおじさんの存在。
結局今もまだわかりません。
そんな親戚の兄ちゃんと姉ちゃんがすむ那珂川のほとりにはえる極太の孟宗竹。
それでつくった大匙。
刃物でしあげました。
那珂川の流れ、そこに棲む魚たちをイメージして模様を刻みました。
なかなかこんなに太い孟宗竹には出会えません。
完成品は…
親戚の兄ちゃん姉ちゃんちで使ってもらっています。
炒め物、ジャムづくり、なんにでも便利と思います。
うちにも一本同じものをそろえています。
豚肉、ズッキーニ、エリンギ、鉄板、希少大匙
盛り付けです。
鉄製のフライパンは重いですからね。
今年の冬、何本か翌年用にしたてたいなと考えています。
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