冷たい春風が川の水音を運んでくる。
鮎が遡上する変化点にしっかりと構える鷺。
こういった場所に鷺の姿が目立ちはじめた。

3月上旬の那珂川。
今だ大渇水で…

天日干しされるコカナダモたち。

オオカナダモだろうか。
僕の釉薬熱が高まる芸術性の高い干され具合。
後日採取するとして…

そんな那珂川にも雨と雪が降り、微かに増水。
日中の虫の舞う日、黄色く色づいたきれいな小砂利底の浅い緩流帯に身を休ませながら虫を捕らえる魚たちの姿が。
鮎の遡上の季節。
大きな鮎たちはもうこのあたりまで遡上してきているようだ。

鮎の遡上停滞を心配していたけれど、「そんなの関係ね~のよ」と言わんばかりに栃木へとやってきた天然鮎。
3月7日は観測史上最速(アユ情報2025年1号)。
サイズも大きい。

2040年の遡上予測は今回の栃木入遡上日を換算するとどうやらもっと早まる傾向になりそう。
だいたい2037年ごろか…
前回の遡上スピードの記事。
実観測データから算出した遡上スピードでは3月9日が栃木入予想だったから、実際にそんな傾向なのだろう。
他の地域の遡上スピードもだいたい似たようなものらしい。
3月10日前後に鮎のきらめきが確認できることもあり、やはり毎年この時期に栃木入りしてる早期群はいるんだなと改めて思う。

温かいのが好きな鮎も、川の温度が10℃を越えてくると海が温くても冷ややかな川へと遡上するらしい。
「遡上しなきゃ」というスイッチがはいるのだろうか。
わざわざ海水から真水へと大胆な環境変化を選ぶって、どういう心境なのか。
なんとなく分かる気もする。とてもおもしろい。
しかし、雪とか降雨とか河川水温を低下させたり、日照がないというのは遡上を遅れさせると思っていたからとても驚かされた。
むしろ雪解けとなり一雨ごとに流れはじめるより一層冷涼な真水が、鮎を川へと導くのだろう。
昨年の雨振る寒い朝、川岸をずらずらとのぼる帯状の群れを思い出した。
やはり想像しているより遥かに鮎は逞しい。
やはりそういう姿をちゃんとこの目で見ていきたい。

遡上の遅れに影響するとして心配していた昨年の冬場の海水温の低さ。
これは長い年月の中でみるとむしろ高い温度帯で、近年は高く推移している。
これは冬に限ったことではない。
年により寒かったり温かかったり、ぶらぶらと振れたりする月もあれば、比較的安定な月もある。
年々安定的になり、上昇傾向なようすの那珂川河口の海水温。
秋~春なんて上昇傾向がはっきりしている。
特に、海での鮎の成長とか生残、遡上の早遅に関与するであろう2~4月の海水温は、以前は年により結構ブレブレだったが、近年はより安定的になってきていて、しかも著しく上昇傾向。

那珂西にて鮎遡上観測を始めて6年。
その間の遡上確認日は2月中旬(目視2/18最速)から3月上旬だから、海が温かくなってきている状況下での遡上模様ということになろう。
そして

アユ情報1号では、2~3月の海水温が温かいと栃木での初観測日が早まるという傾向が示されている。
せっかくなので孵化仔魚流下時期の10月~遡上終期5月までで見比べてみる。
水温が高いほど遡上観測日が早まる傾向は、仔魚期の10~12月では顕著でないが、1~3月は結構右肩上がりな感じ。4~5月にかけてなだらかになる。
特に海水温の底と思われる1~3月で顕著に右肩上がりできれいにまとまっている。とりわけ2月か。1月も外れ値を除けば綺麗な右肩上がりがもっとも強くでそうだ。
ちなみに茨城千代橋での観測データを見ても同じ傾向のようだ。

冬場の海水温の底上がりが、遡上の早まりに影響しているということなのだろうか。
同じ水温帯で見ても遡上観測日に20日程度のふり幅があるから今後どのような傾向になるのか。
できれば産卵期とか流下時期のデータもあわせたいところ。
産卵期の遅れとか晩期化により海洋生活期間は以前より短くなっているが、以前より海が温かいからいつも通りに早く帰ってくるとか…色々な視点から見てみたい。海洋生活期間なんかも知りたい。
日本海側の鮎だと、4月の海水温が高いと「遡上量」が少ないとか、10月の海水温が高いと「遡上量」が多いとか…。
那珂川だと遡上が早い年はたくさんのぼってくると言われているけれど、遡上の早遅という視点の他に、「遡上量」としてどうこの温度変化の影響をうけているのかを知っておきたいところ。
遡上全体の山が海水温の上昇で近年前倒しになってきているのかを把握したい。

茨城県の近年のデータをWeb上から抽出できたもので図にしてみたが、最近のデータしかないので海水温上昇による遡上期の前倒し具合はちょっとわからない。
また年々右肩上がり、あるいはさがりな何か数値ってないだろうか。
例えば河川水温とか河口域の餌なのか塩分濃度なのか、感潮空間だとか…遡上の早期化と連動しそうな何か。
探りを入れられることはまだまだありそう。
那珂川の鮎の生態的な状況を純粋に知りたい。
僕らが利用できるデータは限られる。
流下状況や産卵状況なのどのデータも誰でも閲覧できるようになるといいなと心から思う。
・・・

地層に思う。
川と鮎の長い歴史。
詳しくはわからないが、寒い時期の氷河期と温かい時期の間氷期を10万年周期で繰り返し地球は生きているということで、今はどうやら温かい時期。AIに教えてもらうことによれば、この周期も約80万年前までは4万年周期、80万年前から現在までの期間は10万年周期らしい。ちょうど今はその転換期で「風の時代」とかいわれるやつ。ラジオできいた。
1万2千年前に終わったとされる氷河期。
間氷期はまだ何万年も続くようだが、6000年前の縄文時代は今より2~3℃温かかったようだ。
間氷期にも変動はあるらしい。

1000万年前の鮎の化石が発見されている。
大陸から日本が分断された時期らしいから、まさに日本を知る魚。
鮎は氷河-間氷期4万年周期を230回、10万年周期を80回繰り返してきて今ここにいる。
この地層のどこかが底だったころに、当時鮎は遡上していたのだろうか。ここはまだ海だったかもしれない。
想像を絶する期間だし、どうだれが考えたって鮎はすごい。

地球が生きている証拠ともいえる「温暖化」。
でもここ数十年で僕らが急加速さしている温暖化だから、「温暖化」とあっさりと言ってしまうとどうも他人事感があって…あまり使いたくはないけれど…。
このまま鮎の順応の高さにおんぶにだっこし続けるか。
地層から想像する当時の川と鮎と、昨今の遡上状況と海水温の高まり。
単純な数字遊びだが、いじってみて、色々考えてみて、まとめて思いを巡らせてみると、またス~ッっと「0」な気持ちになる。
力が湧いてくる。

今僕らはいったいどういう時期にいるのだろうか。
1000万回遡上してきた鮎に、今の水温上昇はどううつっているのか。
どう関わってゆくべきか。
・・・
川鵜にもきいてみたい。
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