手を動かしているときは「無」…
…「無」では決してないことをこれでもかというほどに感じています。
想像以上に頭の中をグルグルとザワザワと、様々な音や思いがめぐっているものです。
鱒の彫刻。
色づけにも色々ありますが、どれも様々な条件がそろった時にしかすすめられません。
色々だの様々だの言っている間にも刃を入れた鱒の表面は日々変化し続けています。
その変化もまたよいものですから、増々悩まされます。

毎日毎日鱒たちを目にしては考えています。
ずいぶんと悩んでしまいました。

流木の鱒たちは、個性豊か。
そして頼もしい方々ばかりです。

彼らのこれまでは、随分と過酷だったようです。
一度、あの世を経験したものや、大きく傷を負ったまま癒えていないものも。

魚の生々しい生臭さのようでもあり、血なまぐさくもあり、どこか獣のような香りも漂わす。
いったい、何なのか。

ランディングネット。

孟宗竹、真竹を使用したもの。

流域の作用。
考えもつかないデザインが流域には転がっているのですから、見つけるのも、作るのも、たのしい。

オイカワから渓流用。

フレームは真竹でランダムな斑を施しました。

埋もれ木グリップ。
かつて黒鱒というブローチにも使用した材。

彩、模様、香り、どれもが素晴らしい材。

彫グリップ(ホリグリップ)。
山桜材に彫りをいれた仕様です。できるだけシンプルなつくりを目指しました。

ホリグリップ梅。
割れが入りやすい材。
鱒の顔付近に細かなヒビが入っています。
でも、これも素材の特性であって、このランディングネットの個性でもあります。
赤い木彩にどんな色のネットがあうのだろうと、イメージを膨らませています。

右曲がり。

オイカワのために。
ネットはモスグリーンの泥鉄グラデーションか…。

様々なバリエーションを試しています。
今回はあまり焼きを入れずに斑をいれました。

こちらは表面をやや強く焼いてシャープな斑をいれました。
ちなみにこちらの竹は病気の竹を使用しています。

内側にも焼きをいれています。

そしてネットの染めも、自家製柿渋で染色します。
だいぶ濃ゆい汁に仕上がっています。

こちらは泥鉄泡。
黒っぽいグラデを出すための汁です。
レシピは存在せず、減れば心のままに様々な素材を溶かし入れて仕立てていきます。

灰青系グラデ。

灰赤系グラデ。

灰紫系グラデ。

灰竹系グラデ。
竹の若草色と成熟の黄色の混色です。
6月になれば鮎も解禁。
鰻もぼちぼち始動しなければといった川事情。
限らる時間の中で様々なことに想いをめぐらせながら手を動かしています。
いま、少しずつですがネット編んで染めてを繰り返しています。
ほんとすこしずつですが、完成品もできてきそうです。
また紹介したいと思います。
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