AYU

あれから10年、今日は最高の春遡日和

あれから10年…

あの日、那珂川にいた僕には、まさかきょうの今を想像できただろうか。

その時、一緒に川で鮎を追っていた同僚たちは、おそらく今も魚たちへのまなざしは変わっていないだろう。

そして今考えれば、あの日にすべては始まったように思う。

大挙して那珂川を遡上する鮎たち。

今日という今日は、最高の春。

そして最高の遡上日和。

増水引水から鮎の遡上のない日はないが、今日は今シーズン1番の鮎の群れが上流を目指す。

朝は8時から14時過ぎまで、細くなったりはあるが遡上し続ける。
10年前のあの日を思い出す。

そして…

群れの中から飛び出す大きめな個体。
しっかりと石をはむ。

縄張りを持ち始める季節。

いつ頃遡上してきた鮎のなのか。
上流を目指す大群から身を外す、強い「個」の意識。

なぜここにとどまることを選ぶのだろうか。
怖くはないのか。

みなと同じじゃなくたっていいじゃないか。
僕はいつだって僕だ。

自由なんだ。

それでいい。
僕は今日、そう強く思った。

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