2019年10月中旬、台風19号がもたらした雨により過去最高に増水した那珂川。
その水に引き寄せられるように、今年もシロザケが遡上してきました。
青、藍、紫がこんにちは
シロザケという魚。実はこれまでじっくり観察したことはありませんでした。
知らなかった・・・・こんなにも美しい魚なんですね。シロザケというと♂の鼻曲がりのブナっ子ってのが良く目にするところ。だから、この♀の銀鱗には目を奪われました。おそらく、銀鱗に潜む、「青、藍、紫」を太陽の日にかざして、「こんにちは」させる機会があまりなかったのでしょう。それに、銀鱗は一見、「白銀」ですので、よ~く観察しなければ白っぽく見える。ホワイトなボディーにうっすらとブナが浮かぶだけです。
それにしても綺麗です。
まさにサクラマスですよ。
Age Estimation
僕の顕微鏡~何歳?
小3の時、学研の付録でついてきた顕微鏡。これを使って那珂川のシロザケの鱗を観察してみました。ちょっとひと手間加えることで、ぬるっとした鱗についたシロザケちゃんの皮を取り除くことができます。乾けば、意外とちゃんと見えます。
よく見ると、年輪があります。年輪はシロザケが海で何回冬を過ごしたかを示しています。冬は餌も少ないので、鱗の成長も悪く、鱗の線がグニャグニャってなって年輪になります。休止帯とか冬期帯とか呼ばれています。
今回調べたシロザケさん(♀)は4本の年輪が観察されました。
ということは・・・・・
Delusional ecology
シロザケさんの回遊生態~那珂川わかんのけ?
この子(シロザケさん)は・・・・4歳。
7歳ぐらいの子もいるそうなので、一般的な年齢でしょうかね。
春に那珂川を泳ぎ降り、黒潮の影響が強まる前に冷たい水域を追うようにオホーツク海へと移動して越夏。その後、冬は南東方向へ移動し北太平洋で越冬、1歳を迎える。翌春、ベーリング海で夏を過ごし、冬にアラスカ湾へと向かう・・・2歳。ここからは夏をベーリング海で、冬をアラスカ湾でという感じに2年過ごしてアラスカ湾で4歳を迎える。そして翌春ベーリング海に戻ると・・・・なんだかソワソワしてきて急に家に帰りたくなって・・・・
秋の那珂川を目指して大移動!!
なんとベーリング海から北海道沖まで直線距離にして2,760kmもの距離を67日間で回遊したという調査結果もあるんです(Tanaka et al., 2005)。びっくりですよね、嘘じゃないんです。それによれば遊泳速度は62㎝/s、水深は10m、水温は9℃(すべて平均)ぐらいだそうです。
秋、那珂川河口沿岸は台風19号の影響で濁り。シロザケちゃんもどこへ帰ったらいいものや・・・・視覚では判断がつきそうにない。これまで移動してきた距離や空間を考えれば、この太平洋側沿岸河川の隣接距離は極めて狭く・・・・よりいっそう帰える場所が特定しにくい。でも大丈夫。
鼻は利く
シロザケは鼻が利くようで、河川ごとに環境水中のアミノ酸組成が違うことを利用し、帰る川を識別しているようです。河川ごとにアミノ酸組成が異なるということは河川によって棲む生き物が違いうということなんでしょうね。ちなみに、サケの仲間の中でも種類によって回帰する母川の見分け方が違うようです。サクラマスは視覚と嗅覚を頼りしているようです。那珂川でも、シロザケは基本は本流で産卵(もちろん支流でも沢山産卵してますが)し、あまり上流まで遡上しませんが、サクラマスは上流域の末端、さらに上流の支流にまで回帰します。母支流回帰性が強い。より鼻が利かないと母支流回帰はできなさそうですものね。
でも、一方でシロザケは本当に本流で産卵したいのでしょうか。増殖事業で中下流域で捕獲して採卵繁殖し続ければ、そもそもそこまでしか遡上してこないんじゃないでしょうか?少なからず関係はありそうな気がします。
それでも増殖の効果はあるとされていますし、資源維持のために必要なことなのでしょうね。自然産卵で十分に世代交代できそうな気もしますけど。
毎年、那珂川へ回帰遡上する極めて身近なシロザケ。
しかし、彼らをよく観察し、その回遊経験を想像すれば、当たり前の魚ではないことに気づくのではないでしょうか。
興味深く拝読いたしました。
サケの一生の移動経路が分かりやすかったです。
写真も、凝ったもので、新しい視点を感じさせられました。
学研の顕微鏡、よいうのが素晴らしい。
トトロさん
読んでいただきましてありがとうございます。
写真は普段魚をみつめている角度を表現できるよう心がけています。
魚それぞれ様々な履歴がありますが、どれもどんな魚も美しいことにかわりないと感じています。
引き続き、読んでいただければ嬉しいです。