FISHES

【生甘い】那珂川天然ウナギを求めて川漁へ

梅雨の那珂川。
今週は雨が続き、川の様子も好条件。
そこで、製作の合間をぬって、良型天然ウナギを求めて上流遠征。

久々のウナギ漁

なんとか7月販売分は確保できました。
300~800gくらいがメイン。
蒲焼サイズとされるのは200~300gくらいだと思いますので天然ならではのサイズです。

中には1kgオーバーも数本。
那珂川の懐の深さ、餌環境の良さがうかがえます。

漁獲してから胃内容物がなくなるまでを目安に、自宅の湧き水をかけ流しで飼育しいますが、吐き戻しやフンを観察すると、圧倒的に多い食べ物は、魚類(オイカワや鮎)、エビカニ類(スジエビやモクズガニ)です。
漁獲して弱ってしまったウナギをさばいてみても、やはり出てくるものは同じようなものです。

夜の川の浅いところには多くのエビや小魚がやってきます。あたりが暗くなりだすと、そうした獲物を求めて極めて浅いところへもウナギはやってきて、捕食します。

中にはトンボのヤゴや水生昆虫、バッタなどの陸生昆虫も胃内容物にみられることもあります。
水槽で飼育しているウナギを観察すると、夜間には水面近くに頭を上げて餌を探している様子も観察されます。
表層の流下物をパクリ!?なんてこともあるのかもしれませんね。

那珂川のウナギはとにかくグルメ。
栄養価の高い、人が食べてもおいしい獲物を食べていることがわかります。
豊かな那珂川流域がつくりだした恵みをウナギも得て生きているわけです。

観察したい

ぴょんと出た鼻。眼の近くにもう片方の鼻。
そして、この口の周りのセンサー。

磁気センサーなるものもそなわっているらしく、これは回遊に関係しているようです。

那珂川に生息するウナギはニホンウナギという種類。
ウナギの産卵場の話は、誰もが知る有名な話ですが、マリアナ諸島(グアム島)の北西約300㌔の地点にある3つの海山(スルガ海山,アラカネ海山,パスファインダー海山)だとされています。
日本から南へ2500㌔離れた沖合に位置します。

海山は水深3000-4000 mの海底から頂上が海面下約10mまでそびえ立つ富士山クラスの海の中の山々だそうです。

地磁気を高い精度で感知でき、産卵場へと向かい、生まれたウナギは赤道海流、黒潮を乗り継ぎ5600㌔もの旅を経て日本沿岸へ、そしてここ那珂川へとたどり着くのです。
河川への能動的な接岸にもこの磁気センサーが活躍しているとされています。

そして産卵期は5~10月の新月。
地球のリズムに深くかかわった産卵行動。

僕たちにはみることのできない世界を見て、経験し、様々な試練を乗り越えて、偶然にもここ那珂川へやってきたウナギ。数あるウナギの赤ちゃんの中で生き残った希少な1尾。

今手のひらにいるこのウナギがその彼なのだと思うと…

人間の想像をこえる存在。
想像をこえますが、想像すれば胸に熱くくる言葉にはできない何かを感じるのです。

回遊生態については、こちらに詳細な研究情報が掲載されています。
研究成果「ニホンウナギの産卵地点の発見」 | 東京大学 (u-tokyo.ac.jp)

よくみると頭にもセンサー。
磁気センサーは臭覚をつかさどる鼻周りにあるようですが、頭のこれは…

ウナギというのはとにかく入口の狭い穴の中に身を潜めていたりしますが、猫の髭のような空間把握の役割をしているのではないでしょうか。

そして、こんもりした頭の肉。
とにかく噛む力が強い。

裏側へ。
あ~美しい。

薄くやわらか~な、なめらか~な表皮を想像させるような顔裏、エラ周り。
ウナギのとにかく美しい部分です。

このグラデーションがたまりません。

このような彩もこの個体のDNAに刻まれたものなのでしょうか。
ウナギに限らず、魚たちのマクロな外観にはいつも驚くばかりです。

口の周りにもセンサー多数(よく写っていませんね)。
餌に対して、口先を何度も触れるような行動を示します。
餌の存在や種類を特定するのに使っているのでしょうか。きっと下方向の水の揺らぎを感知しているのでしょうね。

またまた裏側。この黄金彩。
(この鰭がまたうまいので除去しません)

表皮にみえる独特の規則性のある線模様が天然の証です。

胸鰭は鰭ピンで、柔軟です。
ホバリングするのに適したような、シーラカンスのあの自由自在に360度動く胸鰭のようです。
飼育しているウナギを観察していると、頭を高くあげ、胸鰭をクルクル回しながら定位していることがあります。
餌を待ち構える姿勢なのか、とても器用に胸鰭を使って定位します。

しっぽ。黄金から黒紫へと移る色彩。
そしてよく見ると軟条が多数ある。
ギザギザ。まさかこの先端の一つ一つが敏感なセンサーなんじゃないでしょうか。

いつも、この鰭を使い、体をくねらせながら産卵場へ向かう様を想像してしまいます。

顔に戻ります。
透き通った目に肉厚な唇。とにかく餌をたべる口回りに装備が充実しています。

本当に肉厚です。
ヌルヌル、つやっつや。
(決して指を口に入れてはいけません。頭だけになったウナギでもかむ力は想像以上に強いです。大変危険です。)

キョトキョト…生甘い

ヌルヌルといえば…

これがまさにウナギのヌルヌル。
プルンプルン。
うちではキョトキョトと表現します。
このヌメリを放置しておくとどんどん溶けて1日後には液体状になります。
(クラフトに使用を予定していましたが…最終的にはなくなってしまいました)

魚の体というのはとても無防備で、内臓を水中にさらけ出しているような状態。
そこで表皮を守るのがこのキョトキョト。
病気から体を守る免疫物質がはいっているようです。

水中のみならず陸上をも泳いで滝を越える(父体験談…)ウナギは、乾燥や擦れからも身を守らなければならないわけです。

ウナギ特有の生甘い(なまあまい)香りの正体。
ウナギが生きるために備えた、大切なキョトキョト。
この濃厚な甘い香りは、”くさい”あるいは”くさみ”という表現は決して適しておらず、天然ウナギを味わうには必要不可欠な素材です。

食す~蒲焼をつくる~

ここからは参考までにウナギの蒲焼き製作手順をご紹介します。
好みやウナギの大きさなど様々な条件がありますので、あくまでご参考まで。

透き通った肉。

小さな個体はより透き通っており、大きな個体では白みがかっています。
脂のある魚なので身の厚さが関係しています。
生息する環境によって当然ながら餌条件も異なるので、食べているのが魚が主なのか、エビカニが主なのかによっても身色にも若干の個体差があります。

もちろん味や脂ののり具合にも個体差がでるのが天然ものの証でもあり、野生環境を生き抜いてきたウナギのこれまでを想像しながら命をいただき味わう、ということにつながります。

ちなみに、生きていた個体、死んでしまっていた個体でも身色に違いがでます。

解凍

今回は生のウナギを使用しましたが、冷凍ウナギの場合には、まずは解凍が必要です。
水をはったボウルなどにつけおき、解凍されるのを待ちます。

解凍したウナギから、キョトキョトがでる場合があります。
天然の生甘い風味をそのまま味わっていただくのも良いですが、あまりにも多い場合には焼きにくくなる可能性がありますので、キッチンペーパーなどを使って適宜取り除いてください。

頭と骨を焼いてタレづくり

頭と骨は…素焼きします。

焼き目がつくように。

タレに加えますので、あまり焦がさない程度に焼きます。

焼けたら下記の分量を鍋に用意し、あくを取り除きながら煮詰めていきます。

【分量】

  • 焼いたウナギの頭と骨:1~2尾分
  • 醤油 :大さじ6
  • みりん:大さじ6
  • 酒  :大さじ6
  • 砂糖 :大さじ2
  • 水  :300 ml

タレに水を加えてありますので、好みの濃さになるまで煮詰めたら完成です。
骨についた身はしゃぶります。頭の弾力ある身も味わい深いです。

身を焼く

身を焼きます。
エビ、カニ、魚を食べてムッチムチなのが那珂川の天然ウナギ。
さっきまで生きていたウナギですので筋肉がうきたっています。
まず、身の方から焼いていきます。
いきなり皮から焼くと激しく収縮し、身崩れを起こしたり、網に張り付く恐れがあります。
皮と身を一通り焼くまでは、串うちしておくと、身の収縮をコントロールしやすくなります。

筋肉がうきたちます。

焦げ目がさっぱりつく程度に素焼きしていきます。
身側より皮側の方をじっくり焼くとジューシーに仕上がると思います。
両面に火がはいれば身の収縮、反り返りなどはなくなりますので、不要なら串を外してしまってもよいと思います。

焼いてはタレ

焼いたらタレを塗って好みの焼き加減まで、焼いてはタレしてを繰り返していきます。

完成

肉厚な天然ウナギ…この丼のウナギは720gの個体。
身はふっくら、皮とのバランス、脂ののり加減などが最適。
やや焦がしてしまいましたが、大変おいしかったです。

焼き加減は好みがありますが、皮側は脂が多いのでパリパリ感がでる程度にしっかりと焼き、身はほどほどに焼いてふっくら仕上げるのが、おすすめです。
タレについても好みが非常にわかれるところですので、適宜調整し、最適な度合いを見つけていただければと思います。

きも

お腹周りは食べた餌生物が出入りする場所です。長年ウナギを支えてきた袋たちです。
消化の段階でとりわけ大型の甲殻類では長時間の消化時間を有しますので、内臓に餌生物の匂いが残りやすいという特徴があります。
漁獲したら腹を触診し、胃内容物の大きさや種類を予測。それに応じてしばらくの間は井戸水かけ流し環境下でモニタリング飼育し、胃内容物の消化、脱糞させてからさばくことで匂いうつりの解消をはかっています。

宇宙的な色彩なのが胆のう。

にがだまともいうようですが、苦いので、除去するか、つぶして胆汁をだして調理するのが良いです。

きも汁。

魚やエビカニの消化に長年活躍してきた袋たちです。
胃内容物の処理状態によっては匂いが強く表れる部位ですので、一度茹でこぼしてから、袋を味わうのがよいです。
もちろんそのままの野性味あふれる味わいを堪能いただくのもよしです。
かつおだしでもよし、味噌でもよし、味わい方は自由です。

川漁の経験を積みながら、那珂川の天然ウナギのおいしい食べ方を研究し、少しずつレシピの更新も図っていこうと考えております。

参考になれば幸いです。

想像して、いただく

那珂川の天然ウナギ。
蒲焼だけでなく、ウナギ本来の味わいを楽しめる素焼きや天ぷらでも美味ですし、とても味わい深い川魚です。

ウナギ一尾という命と、生きるために活躍してきた筋肉や臓器、皮…さらにはキョトキョトなど、その部位の機能や特徴にも目を向けて、一つの生命活動を想像する。

産卵のために川を降り、何千キロも離れた海で産卵し、日本へは柳の葉っぱのような海流によって運ばれやすい形態で流れ着く。そして、十数年あるいはもっと長く川に生きる。
そう想像をふくらませると、このウナギの命の尊さを実感できると思います。
そして、味わいも一段と深まります。

数を大きく減らしてきているウナギ。
その希少性は数の少なさだけでなく、奇跡ともいえるような生態的特徴と機能を有するところにも表れていると思います。
単純に”うまい”、”まずい” だけでなく、それぞれの個体の味の特徴から、これまでのウナギの食生活や経験を想像してみるのも一つの味わい方なのではないかと思っております。

ポケマル販売

那珂川にはぐくまれた命を存分に味わっていただけるよう、2021年は川漁活動も一歩踏み出します。

漁獲した那珂川天然ウナギは、個体の状況を見ながら順次さばいて、真空冷凍、販売してまいります。
生体がご希望のお客様にはお越しいただければお渡ししたいと考えておりますので、ご相談ください。

Riverlineの通販 | 綱川孝俊さん | 農家漁師から産地直送の通販 ポケットマルシェ (poke-m.com)

上記販売サイトへ順次アップしてまいります。

天然ウナギの造形へ

那珂川の魚や環境やらのデザインをいかした造形。
僕のクラフトへの想いも川漁を通じてより一層強くなってきています。

大好きなウナギを作りたい。

那珂川流域のヤマザクラを使用し、目には淡水二枚貝。

自家製柿渋+泥鉄染色にて自然な黒を表現しました。

7月中には那珂川天然ウナギの造形を完成させたいなと思っています。

川漁とハンドクラフト。
半農半Xという言葉がありますが、半漁ハンクラ的な生活を目指せたら良いなと、感じています。

多角的な那珂川との関わり。
はじまったばかりですが、どんどん深めていけたらと思います。

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