9月おわりの増水で川は一気に秋ムード、産卵シーズン突入です。
大きな鮎は大部分が下流へ。
それでも小さな鮎の群れが川底をなめまわし、これまでにないほどに石を真っ黒に光らせています。
そんな姿をみていたら、釣りたい、獲りたい気持ちがこみ上げてくるもの…。
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がしかし、ここからは次世代の鮎資源のために、そっと見守る季節。
「もう十分」
つかまえた鮎たちを思い浮かべ、「ありがとう」と感謝の気持ちを唱える。
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天然遡上日本一
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漁獲量日本一
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どのような記録から導き出された日本一なのか、僕にもわからないけれど…
これが事実であるならば、これは那珂川の何を表しているのであろう…
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鮎が育つ豊かな環境がある…
そういうことなのだろうか…
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「昔はいぐらでもいだんだぞ~ぃ」
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僕の嫌いな言葉。
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でも今僕は
周りの人やちびっこたちに、すでにそれを言っている…
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僕は鮎と関わったわずか10年で、すでにこの言葉を口にしてしまっている…
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縄張りをもち鮎となったのが今から何百万年前のことなのかはわからないけれど、今日の今日まで鮎としてここにいるのは事実。
相当厳しい環境変化にも対応してきての今。
その今は過去の変化のどのくらいのレベルなのだろう。
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ダムがあったり、堰があったり、石がなくなったり、護岸ができたり、氾濫が減ったり…
カワシオグサやクチビルケイソウが育ち…
カワウがたくさんやってくる…逃げ場所はない。
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春の遡上期には冷水病、夏に渇水高水温ともなればエドワジエラ症、秋の産卵期には再び冷水病…
一度持ち込まれた病原は那珂川に定着し、消えることがない…。
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そして導水事業、部分的な調査ではあるが一日で数万から百数十万尾の仔魚が吸われているという結果も。
…あげたらたくさん。
那珂川の鮎がおかれている環境はたいへん厳しい。
その脅威はすべて人がもたらしたもの。
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そしてそんな環境を生き残ってきた鮎を今度は僕たちがとるわけですが、漁期は以前よりも長くなっており、鮎の産卵時期も十二分に漁獲できるような設定。
次世代に命をつなぐ産卵期は「禁漁」に。
ヤマメやイワナではとっくにルール化されていますが、鮎にそれはありません。
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産卵時期の鮎は群れ下流へ降ってきては、瀬で産卵。
夏の血気盛んな時期に比べると、産卵を前にした鮎というのはたいへん無防備。
コロガシや友釣り、投網など様々な漁獲手法はありますが、そんな鮎の特性上どの手法でもまとまった数が獲れやすい時期。
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一匹で何万粒もの卵をもつ鮎。
厳しい環境で減耗しながらも、それを乗り越えてきた数匹の鮎は、この那珂川で生きるわずかな手がかりを命に刻み、次世代につなぐ。心も身体も一点集中。
「もう十分」
獲らない勇気。
見守る勇気。
これが自分にできること。
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出水後にキラキラと群れで石を食む鮎たち。
石は真っ黒く光っています。
ふらりふらり、夏の動きと異なる様子をじっくりと観察しながら…
ムズムズする心をなだめるように今期の振り返りと、鮎たちの旅立ちに想像を膨らませ、今年も9月いっぱいで禁漁という決断をしました。
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ここ20年で鮎は10分の1。そんなデータもあります。
日本一鮎を獲りすぎる那珂川…
「前はもっと釣れたんですけどね…」
これからもずっと口にし続けるのはいやです。
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小さな選択ではありますが、そんな選択が広がってくれることを祈っています。
また来年会いましょう。
ありがとうございました。
☟解禁のときの記事です
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