季節ごとに目につく実っ玉。
がしかし、自分が認識しているよりもそれができはじめている季節はだいぶ早く、季節外れ。
柿といえば秋のイメージでいると、6月下旬にはほれ…
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小さな柿がたくさん実をつけています。
剪定されて廃棄されるところを救出し、柿渋を仕込むことに。
鱒の製作の途中だとしても季節ごとの恵みが飛び込んでくれば、いったん手をとめる…そうでないとチャンスを逃してしまいます。
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ここ那珂川流域の水脈から湧き出る水で漬け込む…
定期的に撹拌が必要。はじめはフルーティーでしたが…
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お世話不足か、暑さのせいか、こんな芸術的な膜を製作してしまいました…
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柿渋づくりも3年目となりますが、初めの年はこんなにも立派な柿渋ができました。
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株分けというか湧水で割って保管しておいてますので、さまざまな濃さの柿渋を試すことができます。
鱒の制作では多用する柿渋染め。
黒っぽい体色や婚姻色など、絵の具の下地として、自然な仕上がりを出すために使用しています。
昨年作った柿渋は、舟のコーティングとして使用しました。
今年仕込みのもので冒頭の6月仕込みよりあとのものがこれ。
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こちらは若くてフルーティー。
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色もやや悪いですが…いや問題なし。
そしてこちらが6月仕込みのもの…
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さまざまな匂いの過程を越えて今…しぼりだされました。
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臭いの向こう側に達した6月仕込みの柿渋の色味といったら…
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悪くはなく、先ほどの遅仕込みのものとブレンドすることにしました。
今後がたのしみな柿渋です。
そして、こんな産物が…
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粉状となった搾りかす…
実は湧いていたインセクトが日々食っては砕いたものなのか…だとすればインセクト(たぶん蚊)と共同制作したものになります。
これは面白いものができたと興奮して…
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ウサギのうんこだか鹿のうんこだかのような形状に仕立てて…乾燥することに。
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火薬のような「柿渋玉」が完成。
素晴らしい素材をえることができました。使うのがたのしみな柿渋玉です。
そんな柿渋ですが、木材を染めるのに使用しているだけではありません。
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土手にはえているイラクサ科のカラムシ。
昨年の10月に思い立ってちびっこと仕立てたのカラムシ。
始めはミヤマイラクサや他にも似たようなイラクサ科の茎を使用してみましたが、短く切れてしまったりでうまくいかず、結局は工房の土手にも繁茂するカラムシに着地。
このカラムシとマンモスの強い関係性…そんなことは記事をみていただくとして…
柿渋はこのカラムシを仕立てて紐にしたものを染めるのにも使用しています。
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うっすらと橙色になります。
そこでお得意の泥鉄染めを加えると、イイ感じの色合いに。
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乾燥させて、自家製のニッホンミツバチと茂木のエゴマ油をブレンドしたオリジナル蜜蝋ワックスで撚りをかけて紐にします。
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竹製の携帯用の匙につけてみました。
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そして化学繊維も染めます。
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ランディングネットの網です。
網は基本は編む前に白い糸の状態で染色します。
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熟成させた鉄液です。
その鉄液と流域の粘土のふかふかシルトな部分を混ぜ合わせたRiverline 水(りばーらいんすい)に編み終わった網を浸して泥鉄染めをします。
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いい感じにグラデーションされました。
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だいぶ昔に編んだネットですが、好みの色合いに仕上がりました。
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こちらも柿渋泥鉄染め。
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気温なのか泥鉄液の状態なのか、必ず同じ色合いというのはなかなかでず、不安定ではありますが、それも含めてその時を封じ込める、といった意味で大切に考えています。
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思っていたのと違うこともまた、面白いですし、それはそれでいいという考えが自然と生まれてくるもので、その時に合わせようとしていたランディングネット本体とも意外とマッチしたりします。
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ちなみにこれは木部用のRiverline 水。
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2パターンあります。
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とにかく季節かんじるじるいじりですから、目についたり思い立ったらすぐいじる。
アケビですけどこれまた随分と早くから実がついていますね。
一先ず空気中で熟成させています。
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そしてクルミですね。
染めの原料として有名ですが、僕は果肉だけでなくすべてを砕いて、じるに…
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はじめはとんでもない硫黄臭だか腐敗臭だかしていましたが、じっくりと時をかけて見守った結果…
臭いの向こう側へと到着。
本来なら捨てるであろう場面を我慢に我慢して絶えた先にある静の地。
それを経験してから、ヤマボウシ(だんごぶく)も同様の作法でじるりました。
フルーティー→おやじ臭→硫黄臭→だいたい無臭…越えてまいりました。
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こんな緑のじるだって…ありあすよ。
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なんなのかは知りたい方、聞いてくださいね。
それと少し毛色は違いますが染めの原料ベンガラもあります。
友人の縄文なお父さんに教えてもらいました。
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焼いて粉状にするとこんな色合いに。
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まさに縄文レッドです。
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鱒の体色を表現したりするのにも使用しています。
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柿渋泥鉄ベンガラスペシャルのヒメマスです。
ほんと体色はベンガラオンリーです。
深いダークな赤が素敵ですよね。
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ピラルク―の赤を出すのにも使用。ゴールドとの相性も良かったです。
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そして、そして…
こちらが僕の「じる庫」です。
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ばっぱが漬けて逝った梅干もあり、何らかの作用を僕のじるたちもうけていることでしょう。
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ばっぱが漬けて逝ったシソじるが入っていた空瓶。
こちらに柿渋をいれています。
ちなみに一番右はカラムシ液です。いい色でてますでしょ。これも無臭。すでに向こう側へと着地したじるです。
こうしてみるときれいです。
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柿渋を年代ごとに匂いを嗅いでみると、ずいぶんと味わいが違います。
酸味を感じるような、正直言えばゲロのようなどこかいい匂いの(パラドックスしてますが)柿渋があったり、ワインのようなぶどうジュースのような飲みたくなるような、そんな柿渋もあったり…
それぞれに特徴があって、それだけで木へ塗った場合の色味に違いがでてきます。
さらにはRiverline 水につけた場合の発色具合など様々なバリエーションが出せるわけです。
柿渋でなくても、先ほどのクルミやヤマボウシやアケビや…季節をとおして様々なじるを作ることができる。さらにバリエーションは増えます。
実に目を向けると実から季節を感じることができて、それは熟した時期というだけでなく、青々しい実をつけた時期をもしることができる。熟すまでの過程を観察したり、食べる方法を想像したりする楽しみもくれたりします。
一足はやく、季節の向こう側を想像できるから、時期にくる季節をゆったりと待つこともできるような気もします。
ここ那珂川流域でものづくりをするなら、じるいじりは大切なことかもしれない。
そんなふうにじるいじりをしておもったのでした。
つづきます。
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