15cmほどの遡上鮎の体には丸くただれた痕。
4月上旬の増水時、本流の緩流域にその姿はありました。
この時期にこんなに大きい個体がいるのだなという驚きと、こんなに大きいのに何故病気にかかっているのだろうという疑問が湧きました。
おそらくは早期遡上の鮎。
早期遡上鮎は「強い」「エリート」…
そんな勝手なイメージをもっていましたので、はじめ意外に思いました。
でも、僕たちの周りでも、大人は辛いけど、小さい子には症状が出ず重症化しない病もありますから、鮎の世界でも当然ながらあるのだなと、理解しました。
4月中旬に入ると、追い気のある鮎の姿が観察できるようになりました。
もう友釣りが成立するのではと思うほどの成長具合に驚きました。
尾びれの付け根の色が変わり、追い星も鮮やかに。
瀬では金色の横バミスライドがキラっ。銀色のキラっはやや小さい遡上鮎でまだ優しい光。
石の周りで盛んにテリトリーを主張し、時に水面近くまで泳ぎあがってきます。
サイズは16~17cmほどの大きなものもいれば、10cmほどしかなさそうなものまで。
そもそもこの時期に、こんなに大きな鮎に、こんな早くに育つって、どんだけキャパあるんだろう。
鮎が多ければその分サイズは小さいというのが一般論なのだろうけれど、やはり早期は早期。
大きく育つものは育つ。
でも病気というものもつきまとう。
そう単純じゃない野生環境です。
観察していると色々な疑問が湧いてくるし、わからないことばかり。
遡上限界点に達した鮎たちはいつしかその上へ上へという行動が全体的に弱まっていくのですが、それはどのようにして判断しているのか、共有されているのか…。
上流を目指す鮎、上流から満杯になっていくといった考え方がありますが、そうではなく、下流でもしっかり早期の個体がついています。どうして下流にとどまることを決めたのか…。
などなど、あげればきりがなく、そんな疑問はとんでもない量です。
すべての解釈を求めてしまったら、おそらく…頭と胸が爆発します。
疑問の波の乗りながら進むしかなく、今を続けることで答え的なものを見つけていくしかない。
自分勝手な解釈で良くて、それ以上はやはり、無い。
百聞は一見にしかず…か…。
今年はとりわけ鮎が多いし、びっくりするような場所にまで遡上しています。
支流の枝沢の奥、ワンド、池、たまり…。
閉じ込めれてもその環境で餌をとる姿、雨を待つ姿。
それらを命をもって経験していく姿、すべてに意味があるように感じてきます。
普段は超えない落差でも遡上しいく…。
数がいればそういった個体もでてくるし、その潜在的な能力も受け継がれていく…生き残れれば。
ありとあらゆるバリエーションをもった鮎たち。
数が少ない年では決して観察できない、「那珂川の鮎の特性」のようなものを垣間見ることができるのが2023年の那珂川。
資源の枯渇が心配されるような年が続く那珂川。
たいへん棲みにくくなった那珂川。
鮎は今の那珂川を読み解こうと命をもって流域を全スキャニングしているように、僕は感じています。
「那珂川の鮎」という「種」の存続をかけて。
人間都合の解釈ですが。
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