FISHES

那珂川のサクラマス産卵場2019

11月上旬の木ノ俣川。これより少し上流にサクラマスが遡上できない堰堤がある。

ここは魚が遡上してこられる那珂川の最上流部・・・木ノ俣川。那珂川本流は板室ダムの直下までしか遡上魚はのぼれないし、木ノ俣川のほうがむしろ最上流部になるわけです。この支流も、那珂川の分岐からあっという間に遡上困難なデッカイ堰堤にぶちあたります。だから、例年、サクラマスが必然的に産卵に集まる場所です。

思ったより紅葉はすすんでいませんでした。

木ノ俣川を流れる水。

木ノ俣川は台風のあとということで、水は比較的豊富。やや白濁りがあるかな~といった具合。

漂着した流木たち・・・増水時の激しさを物語っています。

堰堤下流は露盤化がぐっとすすんだようです。

ヤマメなのイワナなの?

産卵場を橋から眺めていると、周辺視野に謎の遊泳物。慌ててカメラを向けると、ヤマメ?イワナ?だいぶ腹ふくれてんな~。変だな~と見ていると・・・ようやくわかりました。

カワネズミ

カワネズミ。しかし、泳ぎが上手です。栃木県では絶滅危惧種Ⅱに指定されています。

サクラマスはどこに?

サクラマスを橋の上から探してみるものの、見当たるのはヤマメ、ヤマメ、ヤマメ、イワナ・・・・・・。ヤマメの多くは次世代を増やすために放流したヤマメの親魚でのようでした。

サクラマスの姿は・・・・数日前には50cm級のサクラマスの姿もあったようですが、残念ながらこの日は・・・・ない。時期的にも産卵のピークでおかしくないし、いないとなると、やはり少ないのでしょう。

放流されたヤマメ親魚の中に、短期降海型サクラマスや戻りヤマメが含まれている可能性もあるかもしれませんが、これだけ放流魚がいては判別がつきません。上から姿形を見る限り、先頭に立って産卵行動している大型個体は大部分が放流魚と見えました。小さなヤマメは野生魚のようでした。イワナの姿もちらほら。産卵床はいくつかありましたので、すべてではないにしてもどこかには卵を産んでいると思います。

産卵床に集まるヤマメとイワナ。
産卵床に集まるヤマメとイワナ。
ヤマメの産卵床
雌ヤマメに追尾する雄ヤマメたち。

幼魚放流~那珂川本流~

木ノ俣川を離れ、那珂川本流の油井地区へ。本流は木ノ俣川と違って白濁りがきつく、水量も多め。

そこで、魚の群れを発見。違和感。ウグイ?

放流されたヤマメの幼魚でした。サイズは15cmぐらいでしょうか?

ヤマメの幼魚は流れがわずかに滞留した場所にごっちゃりと固まって泳いでいました。一部は下流へ流れ分散。泳ぐのが辛そうでした。おそらく放流されて時間が経っていなかったのだと思います。

流れの頭には、カワウから幼魚を守るために竹が水の中に伏せられていました。

このあとどうなるのか・・・・私にはすこし不安に見えました。

親魚放流と幼魚放流~その効果はいかに・・・

産卵場で確認されるサクラマスの数が極めて少ない近年。そんな中、ヤマメを増やす取り組みが、木ノ俣川をはじめ那珂川上流部で実施されているようです。

放流の目的はおそらく、上流部にヤマメを増やすこと。

親魚放流の効果により、来年春にはヤマメの稚魚が新たに沢山生まれてくるとして、ちょうどそのころ、その稚魚より圧倒的に大型の幼魚が本流筋にはいるわけで・・・・。この場合、小さな親魚放流由来の稚魚は幼魚をはじめとする大きめのヤマメたちに競り負けて、川を降る方向に向かったりするのでしょうか?気になります。餌条件のあまり良くない上流でヤマメの密度が高まれば、きっと降るものもでてくるでしょう。

春に浮上してくる稚魚はどれぼどいるのか、どれだけ大きくなって釣られているのか、親魚放流の効果が気になるところです。

過去のサクラマスの産卵の様子。

一方、主たるサクラマスやヤマメの産卵場であろう木ノ俣川に多くの親魚ヤマメを高密度に放流して、とりわけサクラマスの血が放流魚の存在によって薄れるって可能性はないのでしょうか?放流魚の由来はわかりませんが、例年サクラマスの産卵が観察されている場所だけに心配です。そう、この那珂川水系でサクラマスの産卵場があるのは、小域的な場所に限られるので余計に心配です。次世代にダイレクトに放流魚の性質が反映されるわけですから。浅はかな妄想にすぎないかもしれませんが。

ハンドメイド生態より。50㎝級サクラマスのペア。

野生環境における世代交代に関与する放流。解禁時の成魚放流のような「釣りきり」の放流とはだいぶ毛色が違います。

これまで多くの放流が行われてきた経緯があるとはいえ、那珂川系統たるものが可能性は低くとも存在するかもしれません。あるいは、存在しなくても那珂川のサクラマスとしての血をつないできた系統は野生魚として那珂川にいるのは事実です。ならば、その系統を使った放流魚の作出というものが、ここ那珂川では必要なんじゃないかな?と僕は思うのです。理想にすぎないのでしょうか。

放流が目指すもの、放流魚の由来、そして、その増殖の効果・・・・・那珂川にかかわる一釣り人としてぜひ知りたいと思うのです。

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